

“たいしたことない”気持ちこそ手当てを ― 日常にできる感情のケア
日本の精神保健は、「つらくなったら病院へ」という治療中心の仕組みになっています。診断がつくほどつらくなったときに、医療や心理支援につながる。これはとても大切な支援で、救われる人がたくさんいます。 ただ、この仕組みだと「治療」か「我慢」かの二択になりがちで、そのあいだの日常のケアが、まだ文化として根づいていません。 つまり「病院に行くほどではない」と思っている人たちが、実は大きな苦しさの“手前”で踏ん張っていることが多いのです。 この「中間領域」はとても人数が多いのに、支援も、手段も、文化もほとんどありません。なぜなら私たちは、生きてきた中で 感情の手当てを習う機会がなかった からです。 ■ 身体は予防が当たり前。心は…? 身体の健康には、予防がしっかり根づいています。虫歯予防の歯磨き、感染予防の手洗い、生活習慣病予防の運動や食事…。 けれど心の健康には「予防」という言葉すら、ほとんどありません。 つらくなったら病院へ 耐えられるならがんばる 我慢できるうちは放置 そんな図式が普通になっています。 でも、感情も放置すれば「虫歯」のようにこじれる。小
kumada rie
11月2日


トラウマケアは特別な人のもの?―日常に取り入れる“感情のセルフケア”という考え方
トラウマは、誰にでもある小さな傷 トラウマケアという言葉を聞くと、「それは特別な人のためのもの」「深刻な体験をした人だけが受けるもの」と感じる方が多いかもしれません。でも、私はそうではないと思っています。 自助グループを運営し、トラウマケア講座を続けていく中で学んだのは、 トラウマは誰にでもある ということです。それは大きな事件や虐待といったものだけではなく、日常の中で受けた小さな否定や孤独、無視された経験、言えなかった気持ち――そうした“ささやかな傷つき”も、心の奥に小さなトゲのように残ります。 けれど、多くの人は「自分はそんな大げさなほどじゃない」と思い、ケアすることを後回しにしてしまいます。そうやって放置された小さな痛みが、いつの間にか人間関係のこじれや、自分を責めたり、他人にきつくあたってしまうような形で表に出てくることがあります。 キャパシターとの出会い 私が出会った「 キャパシター 」という手法は、そうした 日常の小さな傷つきに、自分で働きかける方法 です。呼吸や軽い動き、指圧などを通して、体をゆるめ、感情を落ち着かせていく。まるで自
kumada rie
10月26日


感情をセルフケアできる新しい方法ーキャパシターボディワーク研修レポート
この連休は、感情のケアをボディワークで行う「キャパシター」プログラムの研修に参加してきました。 体にアプローチするトラウマケア 日本ではまだあまり知られていませんが、体にアプローチすることで、自分自身の付き合いづらい感情(怒り、悲しみ、不安、パニック、自己否定感など)やトラ...
kumada rie
9月16日


自助グループの読書会でワーク始めました~心の回復を仲間と一緒に
この2か月ほど、新しい取り組みとして読書会でワークにも取り組み始めました。私たちが読書会で使用している書籍「 子どもを生きればおとなになれる~インナーアダルトの育て方 」(クラウディアブラック著、アスク・ヒューマン・ケア発行)には多くのワークが掲載されています。これまでの読...
kumada rie
8月25日


完璧主義がやめられないのはなぜ?『101個目のリスト』が教えてくれること
トラウマからの回復の道を歩む仲間たちと、毎月読書会を重ねています。 その読書会で使っている大切な一冊『子どもを生きればおとなになれる~インナーアダルトの育て方』(クラウディア・ブラック著)の中に、私たちの心に深く響く一節がありました。...
kumada rie
7月25日


なぜ『してもらう』だけでは回復しないのか?-トラウマが奪った3つの力を取り戻す方法
私たちは被害を受けた女性たちに向けて、トラウマの仕組みやセルフケアの方法などについてお伝えする「こころのケア講座」を開いています。私自身の回復過程においてこの講座がとても役に立ったので、多くの女性たちに伝わってほしいと思い、研修を受けてこの講座を開いています。...
kumada rie
7月14日


なぜ注意されると自分を否定されたように感じるのか?行動と人格を分ける方法
前回は 「『行動の否定』と『人格の否定』を分ける方法-自分を責めるのをやめたいあなたへ」という記事 で、行動と人格は全く別のものであること、そして私たちの人格(存在)はそのままで100%価値があることをお伝えしました。 ...
kumada rie
6月22日


「行動の否定」と「人格の否定」を分ける方法-自分を責めるのをやめたいあなたへ
今回は、「行動の否定」と「人格の否定」を分けることの大切さについて、考えていきたいと思います。 つらい経験をされた方の中には、「自分が悪いんだ」「私がダメな人間だからだ」と、ご自身を責めてしまっている方が少なくないと感じます。私もそうです。...
kumada rie
6月8日


なぜつらい関係に戻ってしまうの?トラウマと「予測できる安心」の心理学
「未知の自由より慣れた牢獄」 この言葉を聞いて、ドキッとした方もいるかもしれません。今日は、トラウマを抱える方が、なぜつらい状況から抜け出しにくいのか、特にDV被害者の方がなぜ加害者の元に戻ってしまうことがあるのか、その複雑な心の仕組みについて、以前の記事とは別の観点からお...
kumada rie
5月22日


「NOが言えない」は生存戦略だった―生きづらいあなたのための優しい境界線の育て方
先日、第一回目の池田市ACOA大阪こころのケア講座が開催されました。ご参加くださった皆様に心から感謝申し上げます。また、主催してくださった池田市にも改めて感謝の意を表します。 自分と向き合い、様々な状況や人間関係をより良くしたいと真摯に取り組まれる女性たちの姿に触れるたびに...
kumada rie
5月13日


自分に合う自助グループが見つかる!プラットフォーム「wreath」のご紹介
皆さんこんにちは。自助グループ(セルフヘルプグループとも呼ばれています)をお探しの方に、心強い情報をお届けします。 自分に合った自助グループを探せるプラットフォーム 「wreath」 をご存知でしょうか。私たちACOA大阪もこのプラットフォームに掲載していただいています。...
kumada rie
4月16日


4割の若者がデートDVを経験―愛と勘違いされる”束縛”の心理
若者のデートDVの実態 10代、若者のパートナー間にDVがあると言うと驚かれることがありますが、実はかなり多く発生しています。 朝日新聞2025年3月25日の報道 によると、関東、中部、九州地方の中学・高校生を対象としたアンケート調査で次の結果が出ていました。行動の制限(例...
kumada rie
4月9日


あなたの中の"小さな傷"が実はトラウマかもしれない—スモールtトラウマの理解と癒し方
トラウマは、「感情や理性では対応し切れないほど圧倒的な、身体的または感情的痛みを伴う経験に対応して起こる心身の反応」と言われています。その反応は個人差がありますが、代表的なものとして、再体験(フラッシュバックや悪夢など)、回避(トラウマを思い出させる状況や場所を避ける)、気...
kumada rie
3月25日


感謝の罠:日本社会で見落とされがちな感情ケアの大切さ
※この記事はトラウマケアについて学んできた私個人の経験と考察に基づくものであり、専門的な医学的・心理的アドバイスではありません。深刻な悩みがある場合は、専門家に相談することをお勧めします。 本やネットで「今の状況に感謝しましょう」「『ありがとう』と言いましょう」というメッセ...
kumada rie
3月14日


痛みと感情を語る大切さ―性暴力加害者の心理と治療から学ぶ社会の課題
性暴力の本質と加害者性―女性支援活動者が研修で学んだこと
kumada rie
3月7日


フラッシュバック対策に効く!指を握るだけの簡単グラウンディング法
国際NGOキャパシターが世界中で教える、トラウマ回復に役立つ指握りグラウンディング法を紹介。フラッシュバックや不安に悩む方に、誰でも5分でできる簡単テクニック。専門家監修のセルフケア方法で、今すぐ「今ここ」に戻る方法を学びましょう。
kumada rie
2月25日


なぜフラッシュバックでは"今"と"過去"の区別がつかないのか
最近、報道で性加害の問題が取り上げられることが増え、「フラッシュバック」という言葉をよく耳にするようになりました。 フラッシュバックとは、何かのきっかけで過去の出来事が、まるで今起こっているかのように感じられる現象です。心臓がドキドキする、冷や汗が出る、体が硬直するなど、ま...
kumada rie
2月11日


なぜDV被害者は加害者の元に戻るのかー暴力による支配の構造
前回のブログ で、私が新興宗教にハマってしまった背景には、幼少期からの暴力が与えた影響もありました。その影響の一つについて、お伝えしたいと思います。 暴力は被害者の心身を危機に晒します。被害者にとって加害者は、命にかかわるほどの恐怖を与えてくる人です。そのため、その人のこと...
kumada rie
1月30日


新興宗教に入ってしまった私の体験記ー 孤独につけ込む搾取の構造
最近、信憑性のない民間療法や陰謀論などに巻き込まれて搾取された方々の記事を読む機会がありました。その方々の気持ちが少し分かるような気がして、恥ずかしい過去ではありますが、私自身の経験を共有させていただこうと思います。 私は20代の頃、新興宗教にハマってしまった時期がありまし...
kumada rie
1月27日


アサーションがうまくいかない理由とは?トラウマケアと自己肯定感の重要性
アサーションとは、自分の意見や感情を率直かつ適切に表現しながら、相手の権利も尊重するコミュニケーションの方法です。ここではアサーションの詳しい説明は省きますが、私もこころのケア講座でアサーションを紹介しています。 アサーションは非常に素晴らしいコミュニケーションの考え方とス...
kumada rie
1月12日